その他
現在、指定難病と呼ばれる、国の定めた疾患は330あります。 昭和47年に56疾患が指定されてからかなり増えていることが分かります。 現在の難病は公害、薬害による指定疾患はありませんが、国として難病患者さんの支援を開始するきっかけとなったのは、昭和40年代のスモン(SMON)という病気が契機になっています。 視神経障害と脊髄炎を生じ、当時は奇病といわれ原因不明でした。この原因となったのは、医薬品として販売されていたキノホルムという物質でしたが、どのように作用して病気が発症するかを解明するよりも先にキノホルムが原因であると特定し、キノホルムの販売を中止することによって発症を激減させています。 その方法は、全国調査によるキノホルムとスモンの因果関係を明らかにすることでした。 このように個人ではなく、集団を対象として疾病の発生原因などを突き止めるための学問を疫学と呼びます。現在は、伝染病、疾患だけでなく公害、天災、がんの発生因子など、さまざまな応用がされています。 一方で、疫学的に問題となる原因が分かっても解決まで非常に時間がかかり、社会的にも大きな問題を引き起こした疾患(公害)もありました。昭和31年に発見された水俣病です。 詳細はここでは述べませんが、水俣湾で捕れた魚を摂取することにより、有機水銀中毒特有の神経症状を呈した多くの方々が発見され、昭和34年には原因として有機水銀が疑われ、食中毒として対応を求めましたが、科学的因果関係へのこだわりや、企業や国の思惑により被害が拡大し続け、今日まで裁判が続いていることはご存じのことと思います。 さまざまな科学的手法を用いて疾患の原因を探り、治療薬の道を開いていくのが現在の難病治療の王道ですが、難病医療の最初のきっかけは疫学的手法で克服された疾患でした。 ちなみにキノホルムはその後、アルツハイマー病の進行を阻止する可能性があることが発見され、注目を浴びることにもなりました。 |
2017年9月17日