その他
今回は鉄欠乏性貧血についてのお話です。医療機関受診の際は貧血による症状である立ちくらみなどと、ヘモグロビン(Hb)低下の貧血を混同しないようにしましょう。 まず、月経のある女性からです。基本的に毎月出血があるのでうまく造血ができなければ結果的に貧血になります。赤血球の原料として鉄が重要ですが、主にこの鉄の摂取不足で鉄欠乏性貧血になります。近年、鉄に直接触れることは少なくなりました。鉄板で炒め物という言葉はありますが、テフロン加工であったり、やかんも鉄ではなくなりました。食の偏りも原因となっています。症状は、体の隅々まで酸素を運ぶ赤血球の質の低下により倦怠(けんたい)感・肩こり・頭痛・労作時息切れ・動悸(どうき)などが生じますが、少しずつ進行した場合、体も慣れますので無症状ということもあります。そのほか、眼瞼(がんけん)結膜の白色化・爪がもろくなる・易脱毛・皮膚の乾燥・氷が好きになるなどもあります。 診断は血液検査で、まずHb値の低下を見いだし、この値と平均赤血球容積(MCV)なども見ます。MCVの低下があると日本(アジア)人では鉄欠乏と予想して鉄を測定します。鉄欠乏による貧血と診断がつくと、治療は鉄剤の内服となりますが、鉄剤の内服で消化器症状が出る方は内服を断念して鉄剤の点滴となります。しかし、単なる月経で貧血になったのではなく、月経過多により生じる貧血は、子宮に筋腫・がん・内膜症などによる月経異常がないか、婦人科の受診も重要です。 次に閉経後の女性や男性は出血する理由が無いため、胃がんや大腸がんなどからの出血がないか、消化管の検査も重要となります。 貧血はありふれた疾患ですが、いろいろなタイプの貧血が存在し、鉄欠乏性貧血の原因もさまざまです。大掛かりな検査機器も不要で、採血で診断がつく疾患です。お手元に検査結果があればHbとMCVをご覧いただき、鉄欠乏性貧血ではないか推測してみるのもよいかと思います。 |
2018年11月18日