小児科
おたふくかぜはムンプスウイルスによる感染症で、正式には「流行性耳下腺炎」といいます。飛沫(ひまつ)感染や接触感染の後、2~3週間の潜伏期間を経て発症し、片側、または両側の唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)の腫れが特徴です。また合併症としては髄膜炎が多く(2~10%)、そのほか脳炎、難聴、男子の睾丸炎、女子の卵巣炎などがあります。髄膜炎は比較的予後良好といわれていますが、難聴は後遺症として残りやすく、日本耳鼻科学会が行った調査では2015~2016年の2年間でおたふくかぜによる難聴は少なくとも336人に見られ、うち274人(約80%)は高度以上の難聴が後遺症として残り、最終的に12人は日常生活に支障があるため、補聴器または人工内耳の装用が必要でした。おたふくかぜに対する有効な治療薬はなく、こういった重い合併症を避けるためには感染を予防することが唯一の対処法です。 おたふくかぜの学校での出席停止は、唾液腺が腫れた日を0日目としてその後5日間を経過するまでですが、腫れの出る数日前から感染力を持つため、腫れた後での隔離のみでは限界があります。予防にはワクチンが有効ですが、日本では定期接種になっていないため任意で接種を受けるしかなく、接種率は30~40%程度にとどまっています。ワクチンは2回接種が望ましく、1回接種後4~5年後に2回目の接種を行うのが一般的です。現在日本で使用しているワクチンの安全性は非常に高いとされています。ワクチン接種は受けた本人のみならず、その周囲の人の安全を守ることになりますので、お互いを思いやる気持ちを持って、より多くの方に接種を受けていただくことを期待しています。 |
2019年11月3日