皆さんの健康のために

「出生前遺伝学的検査の動向について」

 最近、皆さんがよく耳にする新型コロナウイルスのPCR検査は、遺伝子を用いた検査ですが、そのほかにも一般的になってきた遺伝子検査があります。その一つに、ここ数年妊婦の方に対して行われる、胎児の疾病を予測する出生前遺伝学的検査(NIPT)があります。この検査は、ある一定の染色体の問題を抱えたお子さんを妊娠しているかどうかを知るための妊娠初期の検査で、妊婦さんの血液の遺伝子を用いて行います。

 しかし、その一方で、母体の一般的な静脈採血で行うことができる便利さから、発症が予測される病気に対する知識や理解、検査の精度に対する理解、染色体の問題が予測されるお子さんの妊娠が疑われた場合にどうするかの理解などが不十分なまま検査を受けられるケースも多いという懸念が広がっています。

 そのため、日本医学会では新たなNIPTの認証制度を立ち上げることになり、検査に関する情報提供認証の指針がこの春開始されました。その中に日本小児科学会が認定する「出生前コンサルト小児科医」も設定され、産科を持たない施設にいる認定小児科医にも相談できるようになりました。生まれてくるお子さんが元気であってほしいと思うのは万人の願いですが、同時に人間の精神身体上の特徴は千差万別でもあり、そのような中で検査に迷いを抱えていらっしゃる妊婦さんやご家族の方の家族計画の一助となるべく、この制度を活用して認定小児科医を利用していただけるかと思います。

 小児科医の立場は、生まれつきの心身の健康上の問題のあるなしや程度に関わらず、それぞれが豊かな心身で生活ができるお手伝いをすることです。新しい技術を正しく理解して家族の幸せのために利用したいものです。

2022年8月7日


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