皆さんの健康のために

患者さんの負担を減らす脳神経外科手術の発展

 脳神経外科では、脳腫瘍や脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害、重症な頭部外傷に手術を行って治療することが大きな柱となっています。手術では、従来から開頭手術が行われています。この時には頭皮を広く切開し、頭蓋骨を開いて直接脳を観察するので、体への負担も大きくなります。

 近年ではこのような開頭手術に代わり、患者さんの負担を最小限に抑えつつ、最大限の治療効果を発揮するために、手術の低侵襲化が注目されています。従来は有効な治療法の無かった急性期脳梗塞や、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤については、血管内治療によって開頭無しで病変にカテーテルを誘導し、血栓を除去、脳動脈瘤自体を内側から閉塞・固めるなどの治療が実践されています。

 難易度が高く、治療が困難とされた脳腫瘍の治療にも、脳内への内視鏡などを利用した低侵襲手術が始められています。特に、頭蓋底部から発生する脳腫瘍は、手術用顕微鏡を利用しても限られた視野の中での手術操作となり、摘出難易度も高く、治療に多くの問題が見られます。

 最近では脳内への神経内視鏡の導入で、このような病変治療にも多くの進歩と問題解決が得られています。外側からは見えない頭部の空洞や脳内の脳槽、脳室といった脳脊髄液で満たされた空間などを利用して、脳深部の病巣に到達します。小さな入り口から広い視野を確保して脳深部の手術が可能となっています。

 このような従来型の手術とは異なる進歩した脳神経外科手術が実際に導入されています。まだすべての医療機関で実践されているわけではありません。しかし、患者さんへの負担を大きく減らし、最良の治療効果も期待されるこれらの低侵襲化治療は日々発展していくものと思います。

2023年7月16日


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